コインランドリーの開業を検討するとき、最初に整理しておきたいのが事業計画書です。
金融機関へ融資を申し込む際の判断材料になるだけでなく、自分自身が開業の可否を判断するための資料にもなります。
本記事では、事業計画書の基本構成、記入例、収支シミュレーションの考え方、立地や機器選定の反映方法までを整理して解説します。
数値はいずれも一例であり、物件条件や地域によって大きく変動する点を前提にお読みください。
コインランドリー事業計画書とは何か
事業計画書は、開業後の見通しを自分で確認するための資料であると同時に、融資審査の判断材料にもなる書類です。
経歴、取扱サービス、資金計画、収支の根拠を整理することで、経営の見通しを客観的に示しやすくなります。
事業の見通しを立てるための書類
事業計画書は、開業予定地のニーズや競合状況、想定される売上と経費を数値化し、収支の見通しを可視化するための書類です。
コインランドリー経営は機器台数や店舗規模によって収支が大きく変わるため、複数パターンを試算しておくと判断材料が増えます。
金融機関の融資審査で重視される理由
創業融資では、事業計画書の内容が審査の重要な検討材料になるとされています。
審査では創業動機の一貫性、収支計画の根拠、自己資金の割合などが確認される傾向があり、数値の裏付けが乏しい記載は評価につながりにくくなります。
融資の可否や条件は金融機関、事業形態、物件条件によって異なります。実際の申込み前に、日本政策金融公庫や取引金融機関へ事前相談を行い、必要書類とフォーマットを確認することをおすすめします。
個人事業主と法人での違い
個人事業主の場合は比較的簡易な事業計画書で手続きが進むこともありますが、法人や複数店舗展開では、より詳細な資金計画や実績の記載が求められる傾向があります。
資金調達方法も、保証の考え方や借入条件が異なるため、事業形態に合わせたひな形を選ぶことが大切です。
| 区分 | 事業計画書で重視されやすい点 | 主な確認先 |
|---|---|---|
| 個人事業主 | 創業動機、経歴、自己資金、単店の収支根拠 | 金融機関・税理士 |
| 法人 | 事業実績、資金計画、複数店舗の管理体制 | 金融機関・税理士・専門家 |
| 不動産オーナー | 土地・建物条件、既存事業との関係、投資回収の考え方 | 金融機関・施工会社・建築士 |
事業計画書の基本構成と記入例
事業計画書では、創業動機、経営者の経歴、取扱サービス、取引先、借入状況、従業員体制、収支計画といった基本項目を漏れなく記載します。
ひな形やテンプレートを活用しつつ、コインランドリー特有の機器台数や稼働率を反映できるかを確認しておくと作成しやすくなります。
| 記載項目 | 主な内容 | 作成時のポイント |
|---|---|---|
| 創業動機 | 開業の背景、地域ニーズ、自身の経験との関係 | 市場の状況と動機を結び付けて記載する |
| 経営者の経歴 | 職歴、店舗運営経験、関連事業の経験 | 運営体制の裏付けとして具体的に書く |
| 取扱サービス | 洗濯乾燥、布団洗い、おしゃれ着洗いなど | 料金設定の根拠を併記する |
| 必要資金 | 設備資金と運転資金の内訳 | 見積書と整合させる |
| 資金調達 | 自己資金、借入金、リースの利用 | 返済計画と収支計画をつなげる |
| 収支計画 | 売上、経費、利益、損益分岐点 | 複数シナリオで試算する |
創業動機・経営者の経歴の書き方
創業動機では、なぜコインランドリー経営を選んだのか、地域のニーズと自身の経験をどう結び付けるのかを具体的に記載します。
「共働き世帯の増加により洗濯の時短ニーズや布団洗いの需要がある」といった市場の見立てに、職歴や運営経験を添えると説得力が高まります。
取扱サービス・料金設定の記載方法
取扱サービスの欄には、洗濯乾燥コース、布団洗い、おしゃれ着洗いなど提供内容を列挙し、料金設定の根拠を示します。
近隣の競合店の価格帯を調査したうえで、店舗規模や機器台数に見合った料金を設定し、売上予測と整合させることが基本です。
必要資金・調達方法の書き方
必要資金は、内装工事費や洗濯機・乾燥機の購入費などの設備資金と、開業後数か月分の家賃や水道光熱費に充てる運転資金に分けて記載します。
たとえば設備資金2,000万円、運転資金300万円と区分し、自己資金500万円、借入金1,800万円といった内訳を示すと、資金計画の見通しが伝わりやすくなります。
金額はあくまで一例であり、施工会社の見積もりや物件条件によって変わるため、複数社の見積もりで確認してください。
自己資金と借入比率の目安
自己資金比率は融資審査で確認される項目の一つとされ、一般的には投資総額の1〜3割程度が目安として語られることがあります。
ただし実際の条件は物件条件や事業実績によって変動するため、金融機関への事前相談で確認することが現実的です。
収支計画の立て方と損益シミュレーション
収支計画は、洗濯機・乾燥機の稼働状況から売上を試算し、そこから経費と損益分岐点を導く流れで組み立てます。
収支は地域の人口密度、競合状況、機器台数によって大きく変動するため、複数パターンで比較検討することが重要です。
売上予測の考え方(客単価×稼働率)
売上予測は、機器台数に客単価と回転数を掛け合わせて算出するのが基本です。
洗濯機10台・乾燥機10台を設置し、客単価800円、1台あたり1日4回転と仮定すると、1日の売上は約6万4千円、月商では190万円前後という試算になります。
稼働率は立地、天候、周辺住民のニーズで差が出やすいため、保守的なケースも併せて試算しておくと安心です。
この試算はあくまで計算例です。実際の回転数や客単価は商圏人口、競合店、機器構成によって変わるため、想定を高く置きすぎないよう注意してください。
主な経費項目(家賃・水道光熱費など)
主な経費には、家賃、水道光熱費、機器のリース料またはローン返済、清掃や設備管理の委託費、広告費などがあります。
特に水道光熱費は乾燥機の使用頻度に比例して増えやすく、店舗規模や地域の料金体系によって金額に幅が出ます。
| 経費項目 | 主な内容 | 変動しやすい要因 |
|---|---|---|
| 家賃 | テナント賃料、共益費 | 立地、面積、駐車場の有無 |
| 水道光熱費 | 電気、ガス、水道 | 乾燥機の構成と稼働時間 |
| 機器費用 | リース料、ローン返済 | 台数、メーカー、契約条件 |
| 管理・清掃費 | 清掃委託、遠隔監視、保守 | 無人運営の体制、保守契約 |
| 広告費 | 看板、チラシ、Web施策 | 開業時期、競合状況 |
損益分岐点と回収期間の目安
損益分岐点は、固定費と変動費の合計を月商が上回るタイミングを指し、投資回収期間は初期投資額を月次利益で割ることで大まかに把握できます。
初期投資2,300万円に対して月次利益が20万円程度であれば、単純計算で回収に10年前後かかる計算になります。
稼働率の改善や経費見直しによって期間が変わる可能性もあるため、複数シナリオでの検証が欠かせません。
収支シミュレーション表の作り方
収支シミュレーション表は、月次・年次の売上、経費、利益を一覧化したフォーマットで作成すると比較しやすくなります。
稼働率の前提、経費内訳、損益分岐点までの期間を明記しておくと、複数物件や機器構成の比較に活用できます。
立地と機器選定を事業計画へ反映する
収支計画の精度は、立地条件と機器構成をどこまで具体的に反映できるかで変わります。
売上予測の前提となる商圏や競合状況を事業計画書に記載しておくと、数値の根拠が伝わりやすくなります。
立地選びで確認したい商圏と競合
コインランドリーは徒歩や自動車での来店が中心となるため、商圏人口、世帯構成、視認性や駐車場の有無が売上に影響します。
近隣の競合店の台数、料金、稼働状況を実地で確認し、想定客数の根拠として整理しておくと計画に反映しやすくなります。
機器構成とインフラ条件の確認
機器台数や乾燥機の構成によって、必要な電気容量やガス設備、給排水、換気の条件が変わります。
物件によっては追加工事が必要になる場合があるため、施工会社や電気工事会社、ガス会社への確認を早い段階で行ってください。
| 確認項目 | 主な内容 | 確認先 |
|---|---|---|
| 電気容量 | 機器台数や乾燥機構成に必要な容量 | 電気工事会社・施工会社 |
| ガス設備 | ガス乾燥機の配管、供給量 | ガス会社・施工会社 |
| 給排水 | 給水量、排水経路、床の防水 | 水道業者・施工会社 |
| 換気・ダクト | 排気経路、近隣への影響 | 施工会社・建築士 |
| 賃貸条件 | 用途、原状回復、契約期間 | 貸主・不動産会社 |
インフラ容量の不足は、想定外の追加工事や開業スケジュールの遅延につながりやすい項目です。契約前に現地調査を行い、施工会社やメーカーへ確認したうえで資金計画に反映してください。
よくある質問
ここでは、コインランドリーの事業計画書を作成する際に生じやすい疑問を整理します。
資格の要否やテンプレートの入手先、開業資金の目安などを補足します。
コインランドリー開業に必要な資格はありますか
無人で洗濯機・乾燥機を設置して運営する形態自体には、一般的に特別な資格は求められないとされています。
ただし、物件や地域によってはコインオペレーションクリーニング営業に関する届出や消防関係の手続きが必要になる場合があります。
出店予定地の管轄となる保健所や消防署、自治体へ事前に確認し、対応状況を事業計画書に記載しておくと安心です。
事業計画書のテンプレートはどこで入手できますか
公的機関や民間サービスが提供するひな形を活用すると、作成の負担を抑えられます。
日本政策金融公庫の公式サイトでは、創業計画書のフォーマットが公開されており、動機・経歴・取扱商品・資金計画といった基本項目が整理されています。
表計算ソフトの汎用テンプレートやクラウド会計サービスのひな形も利用できますが、機器台数や稼働率を反映できる自由度があるかを基準に選ぶとよいでしょう。
開業資金はどのくらい必要ですか
開業資金は、物件取得費、内装・給排水などの工事費、洗濯機・乾燥機の機器費用で構成されます。
機器8〜15台程度の中規模店舗では総額2,000万円前後になるという説明もありますが、これはあくまで一例です。
施工会社の見積もり、地域の相場、選定するメーカーや機種によって変動するため、複数社から見積もりを取得して比較してください。
FC加盟せずに独立開業することは可能ですか
フランチャイズに加盟せず独立開業する形も選択肢になります。
ただしFC本部が担う機器選定、店舗設計、集客支援などがない分、機種選定から保守対応までを自身で組み立てる必要があります。
ロイヤリティが発生しない一方で運営負担は増えるため、双方の条件を事業計画書に整理して比較検討することをおすすめします。
収支計画はどのくらいの期間で見ればよいですか
初年度だけでなく、3〜5年程度の中期で作成しておくと実態に近づけやすくなります。
開業初年度は認知度が低く稼働が伸びにくい一方、2年目以降に安定していく傾向があるとされるためです。
機器の減価償却期間やリース契約年数とも整合を取り、回収年数は複数パターンで試算しておくと判断しやすくなります。
まとめ
コインランドリーの事業計画書は、創業動機、経歴、取扱サービス、必要資金、収支計画を漏れなく整理することが土台になります。
売上予測は客単価と稼働率の前提を明示し、立地条件や機器構成、インフラ条件を反映させると根拠が伝わりやすくなります。
テンプレートを活用しつつ、自己資金比率や投資回収期間を複数シナリオで検証してください。
そのうえで、施工会社やメーカー、金融機関、自治体への事前相談を進めることが、次のステップとして現実的です。

